休職とは
働く意志はあるが業務遂行が難しい場合に、労働者の業務を免除することです。
休職制度があれば、怪我や病気で就業が難しくなった場合に治療に専念することができ、従業員が長期的に就業するために安心できる制度です。
休職期間中に回復できず、復職できない場合には「自然退職」となるように、就業規則等で定めている事が多いです。
休職中の従業員は労務を提供しないため、賃金は発生しません。しかし、社会保険は継続しているため、会社側は会社負担分の社会保険料を支払い続ける必要があります。
休職になる要件
休職については法律の定めがないため、休職制度を置くか否かの判断・休職するための要件等は会社により異なります。就業規則に休職について記載があり、条件に当てはまる場合に限り、労働者は休職制度を利用できます。
一般的に、一定期間以上の欠勤が続いた後に、休職になることが多いです。
休職に入るまでの欠勤日数、休職可能な期間についても法律上の規制はないため、会社ごとに規定します。
休職可能な期間として、長いケースでは1年半という期間を定めていることも。
【休職の要件と期間の例】
- 休職の前に体調不良があった場合は、休職前に2週間を目処にイレギュラーで時短勤務にする等調整を図る
- 体調不良が2週間を超える場合は産業医や主治医の意見を参考にしつつ、部門と人事で対応を検討
- 欠勤が30日を経過した場合、30日経過日の翌日から起算して1年間は休職可能な期間とする
(勤続期間1年未満の者を除く)
※休職事由が現存することを証明する医師の診断書を命ずることがある
- 休職可能な期間が経過しても復帰できない場合は、「自然退職」とする
休職中の対応の留意点
仕事や職場から離れる休職者の不安を軽減するためのポイントを以下に記載します。
1.情報提供で、休職に対する不安を払拭
特に精神面の不調による休職の場合、休職期間は職場のことを一旦頭の外に置き、治療に専念することが必要です。しかしいざ休職となると、本人は経済的な側面や、これから復職できるのかという将来的な不安が強くなりがちです。
そのため、休職に入る前や早い段階で、傷病手当等の経済的な補償や職場に戻るまでの具体的なスケジュールについて説明しておきましょう。
2.必要最小限かつ定期的な連絡で、会社との繋がりを感じてもらう
会社からの連絡が心理的に負担になる場合もありますので、休職期間の連絡は必要最小限にしましょう。
一方、あまりに連絡がないと、それはそれで不安になるもの。定期的な連絡があると、会社との繋がりがあることを確認でき、会社への信頼感も維持できます。
連絡のタイミングは、可能であれば事前に伝えておき(毎月月末頃等)、内容は近況や回復程度等の確認にとどめましょう。
連絡方法は、メールや書面等、できるだけ本人の負担にならない方法で行います。
※休職開始時に情報提供を行う際、今後の連絡方法についても本人に希望を確認しても良いでしょう。
復職までの流れ・各工程でのポイント
職場復帰に向けたステップと注意点、復帰後のフォローアップについて、厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」に基づき、説明していきます。
1.病気休業開始
休職者から職場に主治医による診断書(病気休業診断書)が提出され、休業が始まります。休業に際し、必要な事務手続きや職場復帰支援の手順の説明を行います。
👉ポイント
休職者が病気休業期間中に安心して療養に専念できるよう、以下のような情報を提供すると良いです。
- 傷病手当金等の経済的な保障
- 休業の最長(保障)期間等 社内規程
- 不安・悩みの相談先紹介(障害者就業・生活支援センター、区市町村の障害者就労支援センター等)
- 会社からの連絡時期や内容(基本は月末に連絡するので、復帰に関する医師やご自身の見解を聞かせてください 等)
2.主治医による職場復帰可能の判断
休職者から職場復帰の意思を伝えられたら、休職者に対し復職診断書(主治医による、職場復帰が可能という判断が記された診断書)の提出を求めます。復職診断書には就業上の配慮に関する主治医の具体的な意見を記入してもらうようにします。
主治医による診断は、日常生活における病状の回復程度によって職場復帰の可否を判断していることが多いです。必ずしも、「実際の職場で求められる業務内容や職場環境」を考慮した上での判断とは限りません。そのため、会社で必要とされる業務の処理能力の回復状況については、産業医が精査する必要があります。
また、下記のような対応がおすすめです。
①主治医に対し、職場で必要とされる業務遂行能力、復職後の業務内容、利用できる勤務制度等に関する情報を提供し、本人が就業可能なレベルに回復していることを主治医の意見として提出してもらうようにする
②診断書に就業可能な時間や作業内容について書いてもらうようにする
👉ポイント
休職者に対して主治医の診断書を求めるにあたり、上記の他、産業医の先生にも「主治医に伺いたいことや診断書についてのご希望」を確認の上、休職者に依頼されることをお勧めします。
また、診断書に復帰後必要な配慮についての詳細な記載を依頼する場合、休職者に過度な期待を持たせないよう、「検討のために漏れなく示して頂きたいが、会社の状況によっては希望に添いきれない場合もある」とお伝えしておきましょう。
3. 職場復帰の可否の判断、及び職場復帰支援プランの作成
情報収集の上、職場への復帰ができるかどうかを判断し、職場への復帰を支援するためのプランを作成します。
上長・人事担当者と休職者だけでお話を進めるのではなく、主治医、産業医といった専門家の見解も踏まえ判断します。主治医の診断書や産業医面談の結果を踏まえて、詳細を詰めていきます。
👉ポイント
復帰可否判断・復帰プランの作成に向けた、企業と休職者双方の大まかなアクションは以下です。
≪企業≫
復職にあたり、合理的配慮の観点から企業としてできることを休職者に提示。
休職者の求める必要な配慮と、企業としてできることと照合の上、復帰の可否を判断。
≪休職者≫
復職にあたり、ご自身に必要な配慮を企業に提示。
企業に対応頂ける内容と、ご自身に必要な配慮を照合の上、復帰の可否・意向を判断。
【職場復帰の可否を判断するために必要な情報】
- 休職者本人の意思: 職場復帰に対する意向
- 主治医の意見: 診断書の内容では不十分な場合、労働者の同意を得た上で
産業医等が必要な内容について主治医から情報や意見を収集
- 休職者本人の状況: 実際の回復程度、業務遂行能力、治療上あるいは障害上
必要な配慮
- 就業規程・職場環境について: 業務及び職場との適合性、職場にできる支援内容
上記のような情報を総合的に評価し、適宜休職者とすり合わせの上、職場への復帰の可否を判断します。
職場への復帰が可能・可能な見込みと判断された場合には、就業規則に沿って復帰日や会社として実施する配慮(一定期間の時短勤務、業務内容や量の変更、配置転換・異動等)を具体的に検討し、職場復帰プランを作成します。
【各種様式例 ~主治医への情報提供・意見要請/社内での面談用~】
厚生労働省の資料に、各種様式例がありますのでご紹介します。
主治医への情報提供や、主治医の意見を求める際等に参考にしてください。
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き P22・23(スライドP24・25)
・職場復帰支援に関する情報提供依頼書(主治医に対し、休職者の発症~現在の経過や治療状況・留意事項を確認する際の様式例)
・職場復帰支援に関する面談記録票(社内関係者との面談記録用の様式例)
・職場復帰に関する意見書(産業医の意見書の様式例)
事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(全体版)令和4年3月改訂版 P12~16(スライドP16~20)
・勤務情報を主治医に提供する際の様式例
・治療の状況や就業継続の可否等について主治医の意見を求める際の様式例(診断書と兼用)
・職場復帰の可否等について主治医の意見を求める際の様式例
・両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成例
4.最終的な職場復帰の決定
休職者本人の状態を確認するために、産業医面談を実施し、業務をおこなう上で配慮するべき点についての意見書を作成頂きます。産業医の判断を以って、正式に職場復帰を決定し、休職者本人に通知します。
👉ポイント
復帰後の対応や業務上の配慮等の内容が、本人を通して主治医に的確に伝わるようにしておく必要があります。正式な復帰決定にあたり必要に応じてご意見を頂くため、また復帰以降に適切に診察頂くためです。
↓復帰後の対応や業務上の配慮等を主治医にお伝えする際の様式例はこちら。
心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き P23(スライドP25)
・職場復帰及び就業上の配慮に関する情報提供書
5.職場復帰後のフォローアップ・配慮例
病状が悪化していないか?新しい症状・問題が起きていないか?を確認
復帰後に病状が悪化や新しい問題が起こっている場合、早めの発見と迅速な対応が重要です。復帰後は休職者の状態を丁寧に観察・コミュニケーションを図りつつ、日頃から産業医等と連携をとっておきましょう。
👉ポイント:
復職後は、こまめな面談を設定頂くのがおすすめです。例えば、復職のタイミングで1回、復職後1ヶ月は1週に1回、その後は月に1回というように定期面談を設定頂きます。
予め決まった予定として組み込むことで、声をかけるタイミングを逃してしまう・勇気が出なくて声をかけられないといったことを防ぎ、コミュニケーションの機会を担保します。
面談では都度、体調やお互いの状況を確認いただいたり、今後の方針を共有します。
治療状況の確認
治療を自己判断で中断していないか、通院の状況はどうか、現在の病状や今後の見通しについての主治医の意見等を本人から聞き、治療状況を確認してください。治療や通院状況が順調でなさそう・本人を通じて主治医の見解が把握しづらいといった場合、本人の了承を得た上で主治医と情報の交換をおこなう必要も出てきます。そうした場合、疾患が治癒または業務上の配慮が解除されるまで、業務上の配慮について見直しの意見を提出してもらうことが望ましいです。
勤務状況及び業務遂行能力の評価
本人の意見だけではなく、職場復帰の様子を客観的に評価する必要があります。上長から見た本人の勤務状況や業務遂行能力といった点はどうか、主治医の意見はどうか等、客観的な評価をおこないましょう。
万が一、職場への復帰が決定した際に、想定していた期間を越える突発的な休職等があった場合は、産業医面談をおこない、主治医と連携をとりながら適した対応を検討します。
職場の人間関係がきっかけで休職されている場合の、復職後の配慮例
- 一定期間 上司が窓口になる
- 徐々に、上司が見守りながら他の社員ともかかわる
- 関わりを増やす際は、安心できる社員から
上司以外の社員との関わりを増やす際は、安心できる方から順に増やしていかれるのが良いかと思います。またその際も、急に休職者と他の社員の2者でのやり取りを増やすのではなく、上司がサポーター(つなぎ役)となって他の社員とのやり取りや関係構築を一定期間見守って頂くと休職者も安心感を感じられスムーズです。
人現関係の課題解消は一朝一夕には難しいことを前提に、焦らず、休職者も周囲も無理のない範囲で対応頂くことがポイントです。
リワーク(復職支援):
1.リワークとは
“リワークとは、return to workの略語です。気分障害などの精神疾患を原因として休職している労働者に対し、職場復帰に向けたリハビリテーション(リワーク)を実施する機関で行われているプログラムです。復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムともいいます。”
※一般社団法人日本うつ病リワーク協会『リワークプログラムについて』
https://www.utsu-rework.org/rework/index.html
2.リワーク支援の概要
- 復職後に会社へ通勤することを想定し、決まった時間に施設へ通う
- 実際の仕事に近い内容のオフィスワークや軽作業を行なう
- 障害理解と対処スキルを習得する
3.リワークの効果
徐々に体と心を慣らしスムーズな復職を実現する
特に休職初期は体と心を休める時期のため生活リズムにはこだわらず、ゆっくり休むことが大事です。しかしながら、復職後は毎朝決まった時間に起床し、通勤することや周りの人間とコミュニケーションを取りつつ業務を行うことが求められます。リワークには生活リズムを整え、徐々に体と心を慣らしていくリハビリテーションとしての効果があります。
働き続けるスキルを身につける
リワークのプログラムを通じて休職の原因となった症状やストレスの根源と向き合い、対処法等を身に着けることで、復職後の再休職や精神面の不調を防ぐ効果もあります。
4.リワークの種類(実施機関)
医療リワーク(医療機関で実施)
病状の回復と再発、再休職予防を目的とし、プログラムが構成されています。病状に関する専門知識を有した医療スタッフによる心理的なフォローを受けながら、心理療法や作業訓練を受けることが出来ます。
※実施している医療機関は限られているため、通院先のクリニックに確認頂く必要があります。
職リハリワーク(地域障害者職業センター)
各県に1カ所以上設置されている地域障害者職業センターが実施しています。センターの職業カウンセラーが、休職者本人と雇用主、主治医をコーディネートし三者間の合意形成のサポート及び様々な支援を行います。
(民間企業等の雇用保険適用事業所に雇用されている休職中の方が支援対象になります。国、地方公共団体、行政執行法人及び特定地方独立行政法人は、対象外となります。 )
職場リワーク(企業内で実施)
各企業内で行われる復職支援のためのプログラムを「リワーク」と呼ぶ場合があります。企業独自に用意したプログラムを行ったり、外部EAP機関を活用することもあります。
その他リワーク(就労移行支援事業所で実施)
それぞれの事業所によって行なっているプログラムは様々です。
就労移行支援事業所とは、障害のある方に対して一般企業への就職をサポートする通所型の福祉サービスで、障害のある方の就職や職場定着のノウハウを多く持っています。
就労移行支援事業所でのリワークに参加した場合、復職後も職場への定着支援(最長3年半)を受けることが出来ます。
5.実施機関ごと「リワーク」の比較
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医療リワーク
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職リハ
リワーク
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職場リワーク
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その他リワーク
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実施機関
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医療機関
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障害者職業センター
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企業、外部EAP機関など
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就労移行支援事業所
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費用
(利用者本人)
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健康保険適用で3割自己負担
1日6時間利用約2,000~3,000円
自立支援医療利用で約1割
1日利用で1000円弱
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公的機関のため無料
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ー
※企業負担又は企業の定めによって異なる
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前年度の世帯年収
600万円未満程度
月額 9,300円
600万円以上程度
月額 37,200円
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対象
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休職者
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休職者・事業主
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休職者
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休職者(必要に応じて事業主)
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特徴
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医療スタッフによる心理的なフォローを受けながら、心理療法や作業訓練が出来る。
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センターの職業カウンセラーが、休職者本人と雇用主、主治医をコーディネートする。
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復職後に安定した就労が出来るのかを企業が見極める判断材料になる。
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休職者一人ひとりの状態、状況に合わせてプログラムを決める。休職者と企業間の連携や復職後の定着支援も可能。
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☆弊社が運営している就労移行支援事業所『atGPジョブトレ』でも復職支援サービスを行なっています☆
【atGPジョブトレの特徴】
- 「うつ障害コース」「発達障害コース」「統合失調症コース」、「IT・Webコース」等、
症状やIT・Webスキルに特化したプログラムを実施
- 休職者の体調、ご希望に合わせた復職計画作成(最長2年)
- 休職者との頻繁な面談
- 休職者を中心とした医療機関、企業等との連携
- 模擬職場として、実践的な職業トレーニングで体力・スキルの維持
- 復職後の職場定着支援(最長3年半)
詳細はこちら
人事ご担当者様から弊社へのご相談例と回答
1.休職期間が延長になる等で長引いた場合、契約期間満了を以て有期雇用契約を終了(雇止め)としても良い?
➡就業規則等の規程・雇用時の契約内容等をよくご確認いただき、個別具体的なご事情・従前の類似
事例におけるご判断を踏まえて、ご検討ください。
規程等と照合の結果ご退職の結果を避けられない場合は、休職者に対し不更新の旨を
体調に配慮した内容と合わせてお伝えしましょう。
例: (社内規程で契約を継続できないことを伝えしつつ、)
「○○さんのご健康が何よりも大切ですから、私どもも非常に残念ではありますが、今はお体の事
を一番にお考え下さい。」
2.休職者が求める配慮に企業が対応しきれない場合に留意すべき事項は?
➡合理的配慮の提供をめぐっては、万一トラブルに発展した際に「企業が適切に検討・対応したこと
を証拠化する」ことがポイントです。以下を推奨します。
・休職者から配慮希望を回収し、社内でしっかり検討すること
・もし希望通りにできないものがあれば、理由の説明&折衷案を提示する等歩み寄る姿勢を見せる
➡配慮事項の検討については適宜、産業医の指示を仰ぐのも良いと存じます。
また、この検討プロセスのログを残しておくことも大事です。
➡休職者の希望すべてに沿うことが難しいと予想される場合には、早い段階から社内の法務担当や社
労士の方に指示を仰ぐのもおすすめです。
3.復職されたとしても次回の契約更新は難しいと考えている。
復職前・休職中のタイミングで伝えても良いか?
➡まずは、社内の法務ご担当者様や社労士の方にご確認のうえ、「現時点において次回契約更新不可
の判断は可能か?」、「次回契約更新の有無に関する通知時期として定められた時期と、実際に伝
えたいと考えているタイミングを照合し、問題がないか?」を必ずご確認ください。
・社内規程や雇用契約上の明確な基準により次回契約更新が不可能(勤務日数不足など)
・かつ、契約終了の通知時期が規程類と照合して適切である
以上の場合は、休職者が新たな就業先について早い段階から検討できるよう、復職前の段階でお伝え
することも可能と思われます。
➡ただし、可能な限り休職者への負荷が少なく、また休職者の納得を得られるようお話を進めていた
だく必要があると存じます。そのために、以下を推奨します。
・通知の実施にあたっては、休職者と対話できるお時間を設定のうえ、根拠となる規程を示しなが
らご説明いただく
・休職者のお気持ちを受け止めつつ対応いただく場を設定していただく
・いつどのように伝えると休職者への負担が少ないか、産業医や主治医にもアドバイス頂く
【ご対応イメージ】
①社内法務や社労士に、企業としてのご意向を相談いただき、通知の仕方を確認いただく
②①の結果も踏まえつつ、産業医や(主治医)にも対応を相談いただき、対応を決定
※参考資料※