卒業生企画「一般就労の経験を通じて」      ー障害者就労のために必要なこととはー

はじめに

「世界統合失調症デー(524日)」にちなみ、atGPジョブトレの卒業生で、統合失調症当事者として就労を継続しながらシルバーリボンジャパンの理事として活躍されている小川貴之さんをお迎えして講演、座談会を開催しました。

当日は利用者の方々、卒業生、職員50名近くが参加。統合失調症や発達障害当事者の方々の視点での発信で、皆が働くことについて考える良い機会となりました。

 

1部では、小川さんからご自身のプロフィール、就職するまでの経緯や、職場に定着するまでの困難や一般就労を通じて感じたことなど、当事者視点からの気づきをお話しいただきました。参加者の方々からはたくさんの質問があり、ご自身の経験を踏まえて一つ一つ丁寧にお答えいただきました。

2部の座談会では「認知から理解へ(精神疾患への理解をどう促していくか)」をテーマに、参加者の方々と有意義な意見交換をし、とても盛り上がりました。

 

今回は第1部小川さんの講演、第2部座談会に関する内容を簡単にまとめてお伝えします。

第1部では小川さんが講演でお話しされた言葉をそのままお伝えいたします。

第1部 一般就労の経験を通じて

私はビデオ・オンデマンドのコンテンツ配信供給会社で正社員として、現在は障害を原因とする配慮事項なく勤務しています。

障害は統合失調症。17歳の時に精神科を初受診しその半年後に診断が確定、その後ASD及びADHDの傾向が強い発達障害とも診断されました。

 

現在に至る経緯としては、新卒で障害者雇用を目指しましたがノウハウがなくアルバイトを転々とした後福祉関係の支援者と出会い、初のオフィスワークを経験後半年で退職するなど、なかなか定着することができませんでした。その後atGPジョブトレに入所、支援者の勧めで現在の企業に契約社員として就職し、38ヵ月後に正社員に登用されました。

職場に定着するまでの困難としては、金銭的な問題、自分の希望する事務系の職種に就くことができなかったこと、職場の人間関係。特に職場の人間関係は障害者にどう接してよいかわからない社員が多く、また、自分自身もどうアピールしていけばよいのかわからなかったため半年で退職ということになってしまいました。

現在の会社で契約社員から正社員になりましたが、38ヵ月の契約社員の時に無遅刻無欠勤で安定して働けるということをアピールし、仕事上で自分の役割をきちんと果たし周りからも信頼を得ていたことが正社員登用につながったのではないかと思っています。

私自身、職場になじむまで34年の時間がかかりましたが、一般就労を通じて感じたことは、周りの支援者に頼ること、普段の自分を知っている人のアドバイスを受けること、言われたことだけでなく自分から進んで仕事をすることが重要だと思いました。

 

今日は、私の経験を通して、一般就労のために必要な準備などに関してお話ししたいと思います。

 

一般就労のために必要な準備、一般就労に向けて取り組んだことは以下3つ。

(1)自己分析する

相性の良い支援者を見つけ、相談しながら進めることが大切。

(2)「自分の取説」を作る

自分はどのような人間なのか、そして自分がよくしてしまう失敗やなりやすい体調不良などに対する対処法をまとめたものは就労する前にも後にも役に立つ。特に就労した企業にとって役立つものだと思う。取説を作るには日記やメモ書きなど日々自分を記録するとよい。

(3)自らの頭で考える

できていると思うところは伸ばし、不足している部分を補う。人によって得意不得意は違うから、自分にとって必要なものを理解する。

 

 

atGPジョブトレでの取り組みでは、障害者雇用での就職を目指す仲間との出会い、企画立案・実行に取り組めたこと、障害特性を乗り超える実験の場を提供してもらえたことが役立ちました。

 

一般就労し、感じた現実としては給料の現実、そして時間外労働の現実です。給料に関しては、求職者も企業を選んでいるという意識で最初の交渉をすることが大事だと思います。また、正社員になるとルーティンワーク+αの仕事が任され、基本的に一般社員と同じと考えた方がよさそうです。

 

働くうえで考えていることとして以下の4点をご参考にしていただければと思います。

(1)自分に合う働き方を探す

出社中心もしくはリモート中心、フレックスであればどの時間帯が自分の生活習慣に合うのか。時間外労働をするためには体調管理のための自己管理・服薬管理はできているか。そして自らのスキル向上により業務量は増加していく可能性は高く、その時周りに助けを求められるかが大切。

(2)職場の人間関係

職場で大切なのは役割を果たすことで信頼を得ること。周りに助けを求めるには普段からそのような人間関係を構築する努力が必要。普段から自分も周りを助けるということを意識するとよい。

(3)休みの過ごし方の重要性

休みすぎると調子を崩す場合も。そのためのトライ&エラーとして日記やメモをとって自分の生活習慣としてどのように過ごすことが良いのか知っておくことが大切。

(4)障害特性をどのように乗り越えるか

 「自分の取説」として、自分の得意なこと、苦手なことを理解しておくこと。何が障害特性で何が性格なのか、分けて考える。また苦手なことでも仕組みを考えれば少し良く変化する可能性がある。

 

 

第2部 座談会テーマ「認知から理解へ」



障害者っぽいって何?精神疾患が身近でない方、精神疾患を知っていても偏見のある方に正しく理解いただくにはどうしたらいいか。

「認知から理解へ」をテーマに小川さんがファシリテーターを務め、まずは自分自身のことをしっかりと理解することを前提に、約30名の利用者の方々、卒業生、職員が様々な意見を出し合いました。

 

 

・うつは50人に1人、統合失調症は100人に1人、と精神疾患を数字で示すと理解しやすくなるのではないか。意外と身近にいるのではないかと自分と当てはめて考えてもらえるかもしれない。

・精神疾患の方に出会っていただく。出会うことで理解ができる。地道だけど大切なことだと思う。

・統合失調症は怖い病気だということで偏見があるから、今は薬でコントロールできること、怖いものではないんだということを伝えていきたい。薬の効能をCMで流すとかどうだろう。

・統合失調症に関しては、行動までも変えてしまう(陰性症状)という薬の重要性を患者、家族がまず理解していくことが重要。

・「自分の取説」を簡単に作れるツールを作る。スケジュール表の中に体調などを記入できるようにすれば簡単にできるのではないか。「自分の取説」を周りに配って理解していただく。

・発達障害向けのハンドブックのように、統合失調症版も作ってはどうか。

 

 

終わりに

座談会を通して、小川さんからは持ち帰るネタがたくさんできたとの感想をいただき、今後、シルバーリボンジャパン様とatGPジョブトレで何かをともに作り上げていく可能性を感じました。

 

「自己分析と理解だけでなく、障害者雇用として企業様にとって役立つもの。そのために付箋にメモ書き程度のものでよいから自分のことを日々記録することが大切」「就労してからは周りに助けを求められるような人間関係を構築する努力が必要」小川さんが試行錯誤されて導き出した障害者就労のために必要なこと。

小川さんの今まで積み重ねていらした努力に現在のご活躍があると理解したとともに、私たち職員にとっても自分を知ること、周りと助け合える関係構築の重要性を改めて痛感した会となりました。

 

 

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