事例紹介

導入事例

全日本空輸株式会社

障害の有無にかかわらず誰もが戦力となり輝ける一歩先の環境づくりを。ANAグループの障害者雇用

本記事の主なテーマ:グループ企業の障害者雇用推進
全日空空輸株式会社のロゴを中央に、右に木村様、左に古谷様が笑顔で立つ写真

人事部 グループ障害者雇用推進室 古谷様(左)・木村様(右)

全日本空輸株式会社について

全日本空輸株式会社は1952年に創業。航空事業を中心に旅行、商社などさまざまな領域へと事業を拡大しています。障害者雇用にも早くから取り組み、1993年には航空業界初の特例子会社となるANAウィングフェローズ・ヴイ王子株式会社を創設しました。

ANAグループ全体で障害者雇用に対する理解を深め、法定雇用率を達成・維持し続けるとともに、全社員がやりがいを持って働くことのできる職場環境を整備するために、2012年に人事部内に「グループ障害者雇用推進室」が設立され、グループ各社の障害者雇用推進者と連携しながら障害者雇用においてのリード&サポートを行なっています。

今回はグループ障害者雇用推進室の木村晃子様、古谷久美子様に、ANAグループの障害者雇用への取り組みについてお話を伺いました。

(この記事ではスクリーンリーダーでの読み上げに配慮し、引用部分を除き「障害」の表記を採用しております。)

グループ全社員に方向性を明確に示す行動規範「3万6千人のスタート」策定

GPからのインタビューに笑顔で答える木村様の写真
ゼネラルパートナーズ(以下GP):グループ障害者雇用推進室は設立からちょうど10年と区切りを迎えられると伺いました。設立の背景や当初の課題についてお聞かせください。
木村様:当時、法令遵守の観点に加え、多様な人材の活躍により新たな価値を創造し続けられる企業風土を醸成するため、障害者雇用を一つの重要課題として強力に推し進めていく必要があったため、2013年の2.0%雇用率引き上げ予定前の2012年にグループ障害者雇用推進室を設立しました。

グループ各社の障害者雇用がきちんと進んでいるかを確認し、理解促進や職場環境の整備、取り組みがしやすくなる仕組みの提案などを行うことがグループ障害者雇用推進室の役割です。

古谷様:私たちがまず行ったのは、グループ全社の職場を一社一社直接巡り、障害者の採用を提案すると同時に、雇用が進まない原因について丁寧にヒアリングすることでした。個社ごとに課題は様々でしたが、その中でもグループの共通の大きな課題は「障害や障害者への理解不足」であることがわかってきました。

障害者雇用を進めるには、明確な指標と一人一人の意識改革、つまりマインドセットが必要だということに気づき、次に取り組んだのがグループの行動規範「3万6千人のスタート」の策定でした。

GP:「3万6千人のスタート」では、どのようなメッセージを伝えているのでしょうか。
木村様:障害のあるなしにかかわらず、ともに働くことが当たり前になるように、全グループ社員が同じ方向を向いて具体的に目指すべき姿・とるべき行動について伝えています。
以下が「3万6千人のスタート」の内容です。
私たちANAグループ各社は、障がい者雇用を法律で定められているからではなく、社会的公器の自然な責任として、更にはグループを支える貴重な戦力の確保と考えています。
そのために、グループの全社員が「障がい」とその多様性を正しく理解します。そして、共に働く仲間の強みを生かし、誰もが自信と誇りを持って働き、ひとりひとりが輝く、活力のある企業グループを目指し、以下を実践します。

○ 私たち全ての社員は、障がいに起因する働く上での不便さを解消するよう最大限の努力をします。
○ 私たちは互いに向き合い、個を尊重します。障がいをもつ社員は、自分の障がいにとって必要なサポートを周囲に伝え、理解を得られるよう働きかけます。
○ 私たちは「出来ないことではなく、出来ること」に着目し、無限の可能性を追求します。
○ ANAグループは、障がいのあるなしに関わらず事業の発展に必要な戦力として、すべての社員に活躍の機会を提供します。
木村様:この行動規範の揺るぎない原点は、“全社員が対等である”というスタンスの取り方です。そのため、主語には「私たち」や「すべての社員」という言葉を使い、障害のある社員、障害のない社員を区別せずにグループ全社員を対象にしたメッセージとしています。

さらに、「グループの全社員が障害とその多様性を正しく理解します」としていますが、障害だけでなく“障害の多様性”を理解するという部分を私たちはとても大切にしています。

古谷様:例えば、私たちはどうしても”視覚障害”や”聴覚障害”という障害種別で障害をひとくくりにして見てしまいがちですが、実際の障害の状況や必要な配慮は一人一人それぞれ違いますよね。“障害の多様性”を正しく理解していないと、本当は一人一人違うのに、障害を先入観や思い込みでステレオタイプに見てしまい、無意識の偏見や差別を生むことに繋がってしまう。それは私たちが目指す「誰もが戦力」とは反します。この“障害の多様性”を正しく理解するためには、やはり一人一人とそれぞれに対話することが最も重要だと考えています。

全日空グループ社員全員に配られている「3万6千人のスタート」の行動規範カードの写真

古谷様:グループ社員全員に配布している「3万6千人のスタート」の行動規範カードは、2015年の策定当時から必ず社員証のパスケースに入れてくださいとお願いしてきました。当初は携行していない方も多かったのですが、最近は本当にみなさんパスケースに入れて、きちんとサインもしてくれています。また、推進室に対して寄せられる、行動理念に対する共感の声が年々増加していることも肌で感じており、それが推進室の活力にもなっています。

考えが行き渡ってきたことへのうれしさとともに、一人一人に根強く地道に活動を続けてきたことの大切さも改めて実感しています。

ゼネラルパートナーズの知見も活用!“雇用の質”を高める社内セミナーの実施

GPからのインタビューに笑顔で答える古谷様の写真
GP:グループ障害者雇用推進室の設立当初から現在まで、課題にはどのような変化がありましたか?
木村様:推進室設立当初の課題であった「法定雇用率達成」という点については、グループ全体で合算した雇用率としては2014年から現在までクリアし続けていますが、当初は個社ごとに見ると達成できていない企業も多くありました。障害者雇用の実績がない職場もありましたので、各社へ訪れて理解促進を図ると同時に、「こうしたら採用ができるのでは」といった具体的な提案を行うなど、一社ごとのサポートを丁寧に積み重ねてきました。
2022年2月現在、グループ合算で910人の障害のある社員が働いています。月ごとに多少の変動はありますが、ほぼすべての会社で法定雇用率達成という状況になりました。
古谷様:法定雇用率達成という課題は維持し続けるという目標に変わり、働く環境の整備や長期定着といった“雇用の質”を高めていく方向へと徐々にシフトしていけるようになったと感じています。

木村様:課題は量より質へと変わりましたが、一方でずっと変わらないのがマインドセットの必要性です。常に人材の新陳代謝があり、一度伝えればすぐに全員が理解するというものでもありません。時期や環境に合わせて工夫しながら、繰り返し地道に同じことを伝えていくしかないのだということが、10年続けてわかったことでもあります。

古谷様:その手段のひとつとして最近では、グループ個社ごとにカスタマイズをした推進室オリジナルのセミナーを実施しています。参加者事前アンケートや担当者との打ち合わせを行い、課題をヒアリングしながら、個社ごとの資料やセミナーを作成しています。

セミナーでは、マインドセットと合わせて、より正しく合理的配慮を確認するためにはどういうポイントが必要なのかといった具体的なハウツーも伝えています。それらは、これまでのグループ各社における事例やゼネラルパートナーズさんからの知見の積み重ねなどを体系化したものです。

GP:そうなんですね。当社とのご縁のはじまりもまた、当社主催のセミナーだったと伺っています。
古谷様:はい、2016年ころでしょうか。当時、推進室メンバーの取り組みの一環として、ゼネラルパートナーズさんの「障害者雇用推進セミナー」に参加したことがきっかけでした。その後、グループ各社の障害者雇用推進者を対象とした勉強会で、ゼネラルパートナーズさんにぜひお話をいただきたいとリクエストしたことがお付き合いのはじまりとなりました。
木村様:2017年夏からは毎年、ANAグループとしての合同面接会の開催もお願いしており、新卒も含め幅広く求職者をご紹介いただいております。コロナ前は対象地区が東京に限られていましたが、最近はオンラインを活用して大阪や名古屋など全国に地域を広げて実施しています。
古谷様:推進室が合同面接会の場を設ける意義は、グループとしての訴求力を高めることで、より広く、多くの方に応募していただける機会をつくっていくことです。ゼネラルパートナーズさんの大きなサポートもあり、現在では多くの方がANAグループの戦力として活躍しています。
木村様:ゼネラルパートナーズさんはANAグループの行動規範「3万6千人のスタート」をきちんと理解し、その上で適任の人材を紹介してくださるので心強く、それが全幅の信頼を置いている最大の理由です。また、ご相談に対して、良いことだけでなく改善を要する点もストレートにご意見をいただけるのがとてもありがたいです。
古谷様:2021年1月に実施したグループ内の障害者雇用推進者を対象としたセミナーでも「withコロナにおいて『3万6千人のスタート』を今一度考える」というテーマで、ゼネラルパートナーズさんにお話をいただきました。
障害者雇用専門の人材紹介会社という第三者視点を持つ外部の専門家がANAグループの取り組みをどう評価しているのかを学ぶことで、障害者雇用推進者が取り組みへの意義と信頼を増すことにつながり、大きな効果を感じましたね。

グループならではの強みを生かし、社員全員のよりよい未来を考える

今後の展望について説明される古谷様と木村様の写真
GP:今後の展望についてもお聞かせください。
木村様:グループとして障害者雇用を推進している、という点は私たちの大きな強みです。グループ社間で連携しながら進めていくことで、単独で進めるより幅広く障害者雇用を進めていくことが可能になると考えています。
そのために、グループ障害者雇用推進室の大切な役割として、各社の担当者同士につながりをつくるグループ間のネットワーク構築があります。グループ全体としての会のほかにも、同じ業種のグループ会社の連絡会なども開催しています。
古谷様:先日行った会では、現場への配属拡大と雇用形態についてをテーマに意見交換を行いました。各社の状況はまちまちですが、安定雇用のためにはどうあるべきか、何をすべきか、会社の枠を越えて話すことでそれぞれの視野が広がったと感じています。
木村様:グループの行動理念にあるように、社員一人ひとりが自信と誇りを持って働き、輝ける職場であるために、今後も横の連携も強めながら、丁寧に地道に取り組み続けていきたいですね。

インタビュー:2022年3月4日

社名 全日本空輸株式会社
事業内容 定期航空運送事業、不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯事業
従業員数 46,580名 (2021年3月31日現在)
URL https://www.ana.co.jp/group/company/ana/

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